約 431,429 件
https://w.atwiki.jp/kiririn/pages/991.html
804 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2011/07/30(土) 22 11 48.87 ID 5Xm3eCHL0 [2/2] 【SS】魅力的な彼女の魅力 「どう?似合う?」 試験勉強中の俺を邪魔するかのように突然現れた妹様は、しなを作りながらそう言った。 今日の桐乃は生地が薄めの白いブラウスに、桐乃にしては丈の長い、ひざぐらいの長さの藍色のスカートといった服装だ。 珍しいし初めて見る服装だから、おおかた次の撮影の前準備に買ってきた服なのだろう。 それはまぁ別にいい。 問題はその顔に眼鏡をかけていることだ。 眼鏡のタイプは薄い水色のアンダーリム。伊達眼鏡らしく、度は入っていないようだ。 いつもより清楚かつ大人しそうな服装と眼鏡により、雰囲気が普段とまったく違うものになっている。 これで黒髪なら土下座して求婚していたかも知れんが、相手は桐乃だからな。 「まぁ似合うんじゃないか」 無難な誉め方をしておく。 変な誉め方をして機嫌を損ねられてもたまらないしな。 「それだけ? もっと他に言う事ないの?」 桐乃は眼鏡のブリッジを中指で上げそのパーツを強調する。 「えっと・・・初めて見る服だな。 たまにはそういう格好もいいんじゃないか」 俺の言葉に桐乃はムッとした表情をすると、近づいて俺の顔を覗き込んできた。 「・・・・・・・・・」 そんなに近寄るんじゃねえ!顔を近づけるんじゃねえ!見惚れちまうじゃねえか! 耐え切れず、顔が赤くなる前に目線を横にそらす。 「何で顔をそらすの?」 「そういうおまえこそ、何で眼鏡かけてるんだよ」 質問に質問を返す形になったが、桐乃は気にせずに引いてくれた。 ふぅ。これで桐乃に視線を戻す事ができるな。 「今度眼鏡に合ったコーディネートの特集する事になったから、その下準備してるの。 この服もさっき買ってきたんだ」 仕事の前の下調べと準備は欠かさない。 相変わらずこいつのプロ意識はすごいな。 「まだあやせにも見せてないんだからね」 「じゃあ何で先に俺に見せるんだ?」 「あんた、この近所で知らない人がいないくらいの眼鏡フェチでしょ? あたしたちとは違う目線での助言が欲しかったの」 「いつの間にそこまで知られてんの!?」 お袋、桐乃だけでもヤバイってのに、ご近所にまで息子の趣味をひけらかすとか、何を考えてんだよ。 まさか、麻奈実の耳には入っていないよな? 「というワケで、何でもいいから意見を聞かせて。 それともまさか、眼鏡に一番合うのは裸だなんて言い出さないわよね?」 「言わねえよ!」 そもそも眼鏡は服装とマッチしてこそ意味があるのだ。 「知ってるって。 『眼鏡 かけたまま』なのも重要だけど『服 着たまま』なのも重要なんでしょ?」 「ごめんなさいもっと真面目に褒めますから許してください」 俺は土下座した。 何で桐乃が珍しく大人しめな格好をしてるのかと思えば、俺のお宝DVDの女優が着てた格好を意識してやがるのか! 絶対にこいつ、俺のお宝グッズをチェックしてるだろ! 「わかればよろしい。 まぁ、有用な意見が聞けたら眼鏡着用中のあたしの生写真貰ってきてあげるから」 桐乃はニヤニヤ笑いながら「嬉しいでしょ?」と聞いてくる。 仕方がない。 桐乃の写真が欲しいわけじゃないが、桐乃のためだし、桐乃の写真が欲しいわけじゃないが協力しよう。 断っておくが、眼鏡をかけた桐乃の写真が欲しいわけじゃないからな。 しかし、どんな事を言って褒めればいいんだ? 「似合ってるとか、センスがあるとかじゃダメなんだよな」 「当たり前じゃん。 似合ってるとか、センスがあるとか、綺麗だとか、可愛いとか聞き慣れてるし。 そもそもそんな当たり前な事言われなくったってわかってるって。 ・・・・・・もしかしてあんたがさっき顔をそらしたのって、あたしに見惚れそうになったから?」 『そんなわけないだろ』 そんな言葉がのど元まで出かかったが、なぜか発する事はできなかった。 自分でもよくわからないが、たぶんそんなことを言うと桐乃のモデルとしてのプライドを傷つけると思ったんだろうさ。 かと言って肯定の言葉を出すわけにはいかないため、結果として俺は顔を赤く染め、目を逸らすに留まった。 「ふ、ふ~ん。そうだったんだ」 からかうような桐乃の言葉を覚悟したが、実際にはそんな事はなくむしろ戸惑っているように見える。 それとも照れてるのか? あれ?こういう反応って慣れてるんじゃなかったの? (あたしに見惚れてくれるのは嬉しいんだケド、その理由が気に入らないわね。 そんなに眼鏡って良いの?これからはずっと眼鏡をかけるべきなのかな?) なんだかブツブツ言いはじめた。 なんか眼鏡とか聞こえたんだが・・・そうか。俺があんな反応をしたのは桐乃が眼鏡をかけていたからだな! そうに違いない! 「とにかく!綺麗とか可愛いとかって言ってくれるのは、ちょっとは嬉しいし、いっぱい言ってくれたほうがいいケド、 できればどこがどう良いのか聞きたいの」 まぁそうだろうな。漠然と褒められてもどこが良いいのかわからないし、困るだろうな。 「でもよ、今までそんなことしたことないし、どう褒めればいいのかなんてわからないんだが」 「そんなんだからあんたってモテないんだよね」 うるせえ。おまえ以外のヤツはそれなりに褒めてるっつーの。 「思ったことをそのまま言えばいいから。 あんたに豊かな語彙とか期待してないし、とりあえず目に付いた事、思いついたことを一つずつ言ってみて」 そう言われてもな。 妹を前にベタ褒めするのってかなり勇気がいるんだが。 「あんたが恥ずかしいのはわかるけど、面と向かって言われる私だって恥ずかしいの! でも仕事なんだし、少しでもいいものを作りたいなら仕方がないの。 ・・・・・・それともあたしって魅力ない?」 桐乃が節目がちにこちらを見る。 その姿はとても寂しげで、見ているだけで心が痛む。 はぁ、いつもは自信に満ち溢れているのに、何で時々こうして弱い自分を見せちまうんだろうな。 妹である桐乃にそんな姿を見せられたら、兄貴である俺は全力で答えなくちゃいけなくなるだろ? 「おまえは魅力的だからそんな顔するな」 桐乃に近づき頭を撫でてやる。 「誰かの容姿を褒めるなんてしたことないから戸惑っただけだ。 俺でよかったら力になるからさ」 「ん」 桐乃は頭上に手を上げ俺の手を払う、かと思いきや、優しく俺の手を包み込み、微笑んだ。 「それじゃあ、いーっぱい、褒めてね?」 「お、おう」 その様子に初めに思い浮かんだ言葉―『その笑顔が素敵だ』―は俺の口からは出す事ができなかった。 桐乃を褒める事になったものの、依然として何を言えばいいのかわからない。 とりあえずイスに座って、ベッドに腰掛ける桐乃を見る。 桐乃は何も言わずにじーっとこちらを見ている。 心なしか期待に目を輝かせているようにも見える。まぁ、俺の勘違いだろうけどな。 服装と眼鏡、そしてそれがどう似合っているのかを言えばいいんだろうが、どうにも言葉が浮かばん。 「仕方がないな。とりあえず格好の前に思いつくものから適当に褒めてみるわ。 そうすれば次第に慣れてくるだろ。 それでいいか?」 桐乃がビクリと揺れる。 こいつも緊張してるんだな。 「格好以外も褒めてくれるの?嬉しいけど・・・ あ、でもちょっと待って!」 桐乃はくるりと後ろを向き俺に背中を見せると、何かもぞもぞとし始めた。 メイクでも確認してるのか?そんなことしなくても十分なのにな。 「これでよし。それじゃあ、おねがいね」 何も変わったようには見えんが・・・・・・まぁいいだろう。 さて、どこを褒めてみるかだが・・・・・・そうだな、まずは無難に顔や髪にしとくか。 「桐乃、おまえの髪だが・・・・・・」 「う、うん」 「そのライトブラウンの髪、それがとてもおまえに合ってる。 確かに俺は黒髪ロングが好きだが、おまえの顔や表情は明るいから黒い髪よりもその明るさを引き出す髪色のほうが似合ってる。 その色はおまえが選んだんだろうが、すごくセンスがいいな。自分のイメージをよく把握してると思う。 そしてフワリと広がるロングヘアにその愛嬌のあるくせっ毛。おまえの顔は整いすぎて場合によっては近寄りがたい雰囲気を放っちまう が、 そのくせっ毛と髪の広がりがそれを和らげてる事に一役買っている。おまえは結構気にしてるみたいだけどな。その髪型を―」 ―略― 「―といったところか。次に顔だが、おまえは丸顔を気にしてるけどな、おまえの近寄りがたい優等生のイメージが―」 「―意志の強さを感じさせる、その強い瞳。色素が薄くて角度によってはグレーに見えるその色はどんな宝石よりも眩しく―」 「―つまり、大事なのはその目元を映えさせるための、つけまつげなんか必要としない、長すぎず短すぎない―」 「―誰をも虜にするような薄い桜色の唇は口紅がむしろ邪魔になるくらいに綺麗で、そこに触れることを考えるだけでだな―」 「―まさにパーフェクトな形の耳と、それを彩る派手すぎず地味すぎないハート型のイヤリング。俺はアクセサリのことはよく知らねえけ ど―」 ―略―略―略― 「―とまぁ、顔はこんな感じか」 机の上においておいたペットボトルでのどを潤す。 「・・・・・・うん」 喋る事に夢中で気がつかなかったが、桐乃の顔がすごい赤くなっている。 桐乃自身もぼーっとしていて、心ここにあらずといった感じだ。 「桐乃、平気か?」 「う、うん。平気・・・・・・ ちゃんと聞いてるから」 「そうか?体調が悪いなら続きは止めて今度にするぞ」 「まだ続きがあるの!?」 「当たり前だろ?まだ顔について少し話しただけだろうが」 何を言ってるんだ。俺のターンはまだ始まったばかりだぜ。 「・・・・・・聞く。このまま聞きたい」 「気分が悪くなったら言えよ? それじゃあ次は首からだな。 顔から首、肩にかけてのなだらかなラインもさることながら、いつもは長い髪に隠されていて見えないうなじ。 初めて俺に日本人女性のうなじについてときめかせたそここそが、桐乃の首を語る上で一番重要だ。 いつも隠されているからこそ、髪をかきあげた時、髪を結い上げたときにしか露にされない、逆に言えばその瞬間―」 ―略―略―略―略―略― 「―首から繋がる肩、水着や薄着のときにしか露出しないが、そのラインこそが体全体の調子を整えて―」 「―そのブラウス、上から二つのボタンを空けてるおかげで、桐乃の美しい鎖骨が見えてるのがいい。女の美しさの基本は鎖骨が―」 「―そもそもそのブラウス薄すぎねえか?そのせいで桐乃のピンク色の下着が薄らと透けて見えちまうんだが。だがその薄さが―」 「―だが、確かにそのブラウスと桐乃の相性はいいな。いつもとは違って控えめにあしらわれてるそのフリルが桐乃のカワイさを―」 「―ブラウス越しのゆったりとした、だがしっかりと存在感のある胸の膨らみ。つい触りたくなっちまうような、柔らかさを感じさせる― 」 「―そのくせウエストはきゅっと引き締まった54cmで、抱きしめたときにはたぶんその細さに驚いて―」 「―背中から腰にいたるその曲線が―」―略―「―ずっと抱きしめたくなる―」―略―「―いいケツだ―」―略―「―身体をひねたときに できる服のしわが―」 「―陸上で鍛えた引き締まった、だが女性的な丸みのあるふともも―」―略―「―いつものミニスカやホットパンツにはない、その膝丈の スカートから―」 「―瑞々しい、水滴が珠となる肌―」―略―「―野外で活動する事も多いのに日焼けもシミもまるでない―」―略―「―水密桃なんて表現 じゃその柔らかさと甘さを表現しきれない―」 ―略―略―略―略―略―略―略― 「―とまぁ、体はこんな感じか」 机の上においておいたペットボトルでのどを潤す。 よし。自分でもなんて言ったのかよく覚えていないが、今度はちゃんと服装と、服装と桐乃の相性を褒める事ができたぞ。 桐乃もだいぶ満足したか? 「・・・・・・・・・・・・」 喋る事に夢中で気がつかなかったが、桐乃の顔がさらに赤くなっている。耳どころか首まで真っ赤だ。 目も潤んでいて、右手で自分の身体を抱きしめて、左手はふとももの間に挟むようにしてモジモジしてる。 な、なんだ?泣く位怒らせちまったのか? でもそれにしてはなんだか色っぽいぞ? 「桐乃?」 「・・・・・・・・・・・・」 声をかけるが、ボーっとして反応しない。 身体も熱っぽそうだし、まさか熱中症か? ペットボトルを手に立ち上がり、桐乃の前に立つ。 桐乃のおでこに手を当ててみると、かなり熱い。 「おい桐乃、とりあえずこれを飲め」 「ん・・・・・・」 桐乃はボウッとした様子のまま俺からペットボトルを受け取ると、口をつけて飲み始めた。 「・・・・・・兄貴の味がする」 お茶を飲み干し、桐乃がポツリと呟く。 ふぅ、どうやら意識がはっきりしてきたみたいだな。顔の赤みも少しだけ薄くなったみたいだ。 「あ・・・・・・間接キス・・・・・・」 ん?また少し赤くなったような。 「桐乃、平気か?」 「うん。ありがとう。だいぶ落ち着いた。 ・・・・・・飲み干しちゃったから、後であたしのお茶あげるね」 桐乃の異変に気が付かなかった俺にも責任があるんだし、そんなに気を使わなくてもいいんだが。 それにどうせ冷蔵庫の麦茶を移したものだしな。 「様子が変だったが、ちゃんと聞こえてたか? もう一度言いなおしてもいいぜ」 「ちゃ、ちゃんと聞こえてたから! 京介があたしをちゃんと見てたことも、どういう想いでどこを見てたのかもちゃんと伝わったし・・・・・・」 そうか。それならいいんだ。 さすがに今までの言葉を全部言いなおすのは大変だし、そもそもなんて言ったか覚えていないからな。 「さすがにもう終わりだよね?」 「何言ってるんだ? まだまだ伝えてない事がいっぱいあるんだが」 「まだ続きがあるの!? もう顔も、身体も、服もすっごい褒めてくれたじゃん!」 当たり前だろ?そんな十分二十分で桐乃の良い所を褒めきれるはずがないだろうが。 「ただの見た目以外にも色々あるだろ? 匂いだとか、雰囲気だとか、何かをするときの動きだとか、仕草だとか・・・・・・ モデルはただ立ってればいいもんじゃないんだろ? なら、服装と動きの調和なんかも重要になるんじゃないか? それに、今のだってただ桐乃の特徴を表面的になぞっただけじゃねえか」 ようやく口も滑らかになってきたんだ。その気になれば今の十倍は軽いぜ。 桐乃は赤みの残る顔を若干引きつらせ、 「も、もう今日のところは勘弁して・・・・・・ これ以上聞いてたらダメになりそう・・・・・・」 ダメになる?落ち込んじまうって事か? 確かに何度か駄目だしはしたが、大体は俺の趣味的なところだったり、改善が簡単なところだったりだから平気だと思ったんだが・・・・・・ まあ、桐乃が嫌がるのなら仕方がない。体調もだいぶ悪いみたいだしな。 「そうか、なら今日のところはこれでお終いだな。 ・・・・・・体調悪いなら俺の部屋で休んでいくか?」 「きょ、京介の部屋で休憩!? だ、ダメ!それはダメ! 今京介と同じ部屋で寝ちゃうなんて、あたしが耐えられないから!」 「・・・・・・そう、か」 一緒の部屋にいるのが耐えられない、か。 どうやら妹様は大分機嫌が悪いらしい。 褒め方を間違えたのか、あるいは触れちゃいけないことに知らずに触れていたのか。 「あたしは今から部屋に帰って、京介が言ってくれたことを聞きなおしてくるから」 桐乃は手元をごそごそと何か動かすと、立ち上がりドアへと向かうが、その足取りはふらふらと覚束ない。 「桐乃、部屋まで連れて行ってやろうか?」 「い、いい!」 「・・・・・・そう、か」 また拒絶されちまった。 そりゃ嫌いなやつに変な風に褒められたら嫌だろう。 もっと桐乃の反応を確かめながら言葉を選んでいくべきだったんだろうか。 「あ・・・・・・」 落ち込む俺の顔を見て、桐乃の顔色が変わる。 「えっとね、あんたに触られるのが嫌ってワケじゃないから」 「そうなのか?」 「うん。でも、今触られたり、優しくされたりするとあんたにすっごい甘えちゃいそうで・・・・・・ 気持ちが落ち着いてないのに、そういうことしたくないから」 「?」 よく意味がわからない。 怒っているんじゃないのか? 「・・・・・・ねぇ、さっき褒めてくれたのって、お世辞じゃなくて、本心から、素直に言ってくれたんだよね?」 「ああ。俺はお世辞なんて器用なことできないからな」 「うん。知ってる。 ・・・・・・あんたが素直な気持ちで言ってくれたから、勘違いしてるみたいだし、あたしも素直に言うけどさ。 あんたが褒めてくれたの、すっごい嬉しかったから」 「え?」 桐乃が俺に褒められて嬉しかった? 「あんた、あたしのファッションとかあたしの姿にまったく興味ないみたいだったからさ、 ちゃんと見てくれてるのがわかってすっごい嬉しかった。 京介に綺麗だって思われてるって知って、すっごい幸せだった」 桐乃はほんのりと頬を染め、リラックスした様子でフワリと笑う。 「あたしを見てくれて、あたしを褒めてくれて、ありがとうね」 そうか。俺自身なんていったか覚えてないが、ちゃんと伝わってたんだな。 「そうか。それならいいんだ」 「ん。そういうことだから。 ・・・・・・あんたの意見結構参考になったからさ、あたしの写真だけじゃなくて、 もっとすごいのもプレゼントしてあげるね」 「それは嬉しいな。 楽しみにしてるぜ」 「受け取り拒否は認めないから。 覚悟しててね?」 桐乃は頬を染めたままにんまりと笑うと、扉を開けて外へ出て行った。 受け取り拒否のプレゼントか。なんだろうな。 「まぁ、どうせエロゲかなんかだろうさ」 あるいはアニメか。それ以外の選択肢は思いつかん。 時計を見ると、桐乃が来てから二時間近く経っていた。 ほとんど俺が思いつくままに喋っていただけで、ほとんど時間は経っていないと思っていたんだが。 自分でもなんて言ったのかほとんど覚えていないが、たしかにこれだけの時間褒められれば桐乃も悪い気はしなかったのだろう。 まぁ、桐乃は褒められなれてるだろうし、俺の褒め言葉なんか聞き慣れているぐらいでしかないだろうがな。 「・・・・・・まずいことは言っていなかったよな?」 自分の言ったセリフを思い出してみる。 ・・・・・・天使だとか、女神だとか、嫁にしたいだとか、そういう妹に聞かれてはまずい言葉は言っていなかったはずだ。 なら問題ないよな。 ん?だがしかし、 「あ。しまった」 二つ気がついた。 まず一つ。 確かに言ってはまずいことは言った覚えがない。 言った覚えはないが、言わなくちゃいけなかったことを言わなかった覚えならある。 「これじゃあ桐乃に後でもう一度褒めろって言われちまうな」 なぜなら 「眼鏡を褒めるのを忘れてた」 元々は桐乃に眼鏡のことを褒めろと言われていたのに、結局そのことについては触れず、桐乃自身のことばかり褒めてしまった。 しかたがない。 後で眼鏡について触れておこう。 ついでにその際に褒めそこなった場所についても言及しておこう。 桐乃は褒められるのが好きみたいだしな。 そしてもうひとつ。 「まぁ、こっちは言わなくて正解か。なんたって」 ふと、さっき見た桐乃の笑顔を思い出す。 『あたしを見てくれて、あたしを褒めてくれて、ありがとうね』 そう言って幸せそうに微笑んだ桐乃の笑顔は― 「『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』からな」 -END- オリジナルサイズ
https://w.atwiki.jp/kiririn/pages/1630.html
914 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2013/01/06(日) 02 06 50.81 ID qgXr6WFZ0 908 京介「あやせ!そんなに俺と結婚したいか、よし!なら式場は・・」 あやせ「な、なに気持ち悪いこと言ってるんですか!変態!!」 京介「はははは」 桐乃「・・・(イライラ」 京介「俺は本気だぜ?(キラッ」 あやせ「き、気持ち悪いです!」 桐乃「もう!何よあやせばっかり!!!」 京介「ど、どうした、桐乃?」 桐乃「あ、あやせが京介と結婚したくないってんならあたしがするし!!!」 京介「ちょ!!おま!な、なにいっちゃってんの!?」 桐乃「あれ~?なにそんなあせっちゃってんの~?プププw シスコンなあんたなんだから あたしと結婚できたらうれしいんじゃないの~?」 京介「それはそうだが・・」 桐乃「え!?」 あやせ「・・・(イライラ」 京介「桐乃・・結婚しy「お兄さん!!」」 あやせ「あの~、私を放置しないでほしいんですけど?」 京介「す、すまなかったな」 以下ループ ----------
https://w.atwiki.jp/kiririn/pages/248.html
75 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2011/01/30(日) 18 34 15 ID 7ukgWbOS0 [1/2] 「あやせ、ちょっといいかな?」 「どうしたの?桐乃?」 学校の帰り際、あたしは親友を見つけて呼びかけた。 「ちょっと相談があって・・・ここじゃ話せないから、今からあたしの家に来てくれる?」 「う、うん。いいけど・・・そんなに大事な話なの?」 なんだか、すごく不安そうな顔してる・・・ そうだよね。家にはあいつがいるもんね。でも――― 「うん。とっても大事な話・・・あやせじゃないと、話せないから。」 「わかった。桐乃がそこまで言うんだから、とっても大切な話なんだよね? それじゃあ、一旦家に帰って準備してくるね。」 「う・・・ん?」 準備・・・?何の・・・? 着替えってコト・・・だよね? あやせはあたしの一番の親友なんだけど、たまに・・・ ごくごく稀~に、思いつめちゃう事があるから、ちょっと心配だったりもする。 でも・・・あたしのこと思ってくれてるんだもんね。 あたしの、今の悩み事・・・それはあまりにも大事な事で、とても人には話せない・・・ でもっ・・・あやせはあたしの趣味も、受け入れてくれた・・・ もしかしたら、この相談で、今度こそ本当に嫌われてしまうかもしれない。 でも、もう隠し事は嫌っ。 あやせにも、あたしの気持ちわかって欲しい・・・ そんな事を考えながら帰宅した。 部屋に戻ってからも、あたしは同じことを何度も考えてしまう。 あやせに嫌われたらどうしよう・・・でも、本当の事を話したい・・・ 何度も何度も、頭の中でぐるぐるして・・・ もう何百回だろう、と思った頃――― ピンポーン そうだ。もう賽は投げられたのだ。 「桐乃。遅くなってごめんなさいっ!」 「ううん、あたしが話を聞いてもらうんだし、全然いいよ。」 「本当にごめんなさいっ。でも、どうしてもやらないといけない事があって・・・」 「い、いいって。」 何か他に用事があったんだろうか?悪い事しちゃったな。 「それより・・・兄貴が帰ってくる前に話しちゃいたいから、早く行こ?」 「お兄さんはこないよ?」 「・・・・・・え?」 「ううん。何でもないよ?」 ・・・今、何かすごい怖い事を聞いた気がするけど――― と、とりあえずっ、あたしの用事からっ・・・ 兄貴の事は・・・後でなんとかなる・・・よね? あやせを連れて部屋に入ったあたしは、念のため、部屋の鍵をかける。 「それで・・・桐乃?どんな問題があるの?やっぱり、お兄さんが問題なの?」 「その・・・直接の原因じゃないんだけど・・・」 「そう、やっぱり、私があれだけ忠告したのに桐乃に手を出したんだ・・・」 「そ、そういうことじゃなくってっ!」 「ううん、いいの。桐乃はやさしいからお兄さんをかばいたいんだよね? でも、大丈夫。今、お兄さんは抵抗できないから、すぐにブチ殺してくるからね?」 「ま、待ってっ!!!」 い、今!?マジで殺そうとしてなかった!?・・・というか抵抗できないって!? 「あ、兄貴が問題じゃなくってっ!あたしに問題があるのっ!」 「・・・どういうことなの・・・?」 あたしは今・・・ルビコン川を渡る・・・ 「あたし・・・前から兄貴のパンツが大好きで、いつもくんかくんかしていて・・・」 「・・・・・・」 「辛いときとか苦しいとき、兄パンに顔をうずめてはぁはぁしてるだけで、ものすごく気持ちよくなって・・・」 「・・・・・・」 「そう、兄貴の体臭だけじゃなくって、汗とか、ものすごく恥ずかしいものの匂いとか、いっぱい吸って元気になるの。」 「・・・・・・そ、そう?」 すこし、あやせがあたしから離れた気がしたけどたぶん気のせい。 「ほんと、兄パンってすごいんだよ?まず、基本は普通に匂いを嗅ぐ事でしょ? それだけでもう気分がすごく良くなって、空に上っていく気分。兄パンいっぱい空飛ぶの、飛んだら落ちてくるよね? 兄パンの雨?いっぱい降ってきたら埋もれちゃうよ?兄パンの海さいこぉぉぉぉっ! それだけじゃなくて、兄パンかぶって勉強するだけで記憶力が2倍、ううん3倍になるの。兄パンマジ赤い彗星、 シャア?兄貴シャアなの?京介・アズナブル、クアトロ・京介、兄貴四倍兄パン四倍?匂い四倍とか耐えられないよぉ。 それにねっ?兄パンはくと、足も速くなるのっ!兄パンこすれて潤滑油でちゃうっ!オイルっ?兄パンオイルっ! 体中に塗りたくるのっ?この変態っシスコンっ!あたしの体にオイル塗って、海に連れてくの? 兄パン海っ!?兄パンオイルで兄パン海っ!もう、体中兄パンまみれなのっ?沢山の兄貴に囲まれてるのっ! 兄貴みんなでオイル塗るの!?兄貴オイルっ!?沢山の兄貴に犯されるの!?ダメっ!犯罪者っ! 頭フットーしちゃうよぉ。近親相姦とかマジシスコン失格!失格っ!でも兄パンないと禁断症状でちゃうよぉ・・・。 それとね、兄パンにも色々種類があってねっ!まず、洗濯後の無臭兄パン!手に入れるのは簡単で、一見初心者向きだけど、 匂いが全然しない、兄貴妄想だけで使用する上級者向け!初心者にはオススメできないっ! そして、はいた後のノーマル兄パン!風呂場で手に入る中級者向けっ!匂いも良いし、鮮度抜群っ! さらにっ、最上級者向けは、夢精の残る、スペ兄パンっ!兄貴のおかずを処分して、兄貴がオナニー出来ないように、 何度も部屋に足を運んでようやく完成する至高の一品っ!とくに、寝ている間に脱がせるのが、鮮度も良くて最高なのっ! 兄パンくんかくんか、生臭い匂いすぅぅぅぅはぁぁぁぁ。兄貴匂い濃すぎ妊娠しちゃう兄貴に妊娠させられるの!?強姦? 兄貴マジ犯罪者はぁはぁ兄貴そんなに腹ボテ見たいの!?兄貴精子で腹ボテ妊娠!? もうこんなにされたらお嫁にいけないよぉ・・・」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」 ふと、あやせを見ると、部屋の一番端っこまで後退していた。 好きなもののコトだもんねっ、すこしだけ熱くなっちゃったかな? でも、ちょっとすっきりしたっ!ほんとのこと言えたしねっ! 「き、桐乃っ!・・・」 あやせは何故か引きつった笑みを浮かべている。いったいどうしたのかな? 「そっ、それでっ!そ、相談って・・・この事!?」 そっか、肝心の相談を忘れてたから、心配になったんだね。 「えとね・・・それでね・・・」 「う・・・うん・・・」 「これまでは、さっき話したみたいにくんかしてるだけで我慢できたんだけど」 「ひっ・・・」 あやせ・・・どうしたの?なんか泣きそうな顔になってるよ・・・ 「最近、それだけじゃ我慢できなくって・・・ぺろぺろしたり、はぐはぐしたりしたくなってくるの・・・ ううん、それとも、もしかして、直接・・・がいいのかなあ・・・」 「きゅう」 「あっ、あやせっ!?どうしたのっ!?突然気を失っちゃったりしてっ!」 結局その後、お父さんにあやせを病院まで運んでもらって、検査してもらった。 幸いどこにも異常は無かったんだけど・・・あたしの相談を全然覚えてくれてなかったの・・・ 学校では、今までどおり接してくれるんだけど・・・ やっぱり、もう一度、相談してみようかなっ! ―――一方、兄貴は――― 「おい、高坂・・・こんな子供の遊び場で、何やってんだ?」 「・・・赤城か・・・よく見てくれっ!この俺の有様をっ!」 「・・・ロリコンにでも目覚めたか?」 「ちげーよっ!?この手錠が見えんのかっ!?」 「・・・手錠プレイか・・・とうとうそんなとこまで行ってしまったのかよ・・・」 「ちげーってのっ!」 「じゃあ、どうしたんだ?」 「・・・美人の女子中学生に呼び出されてのこのこついて行ったら、手錠でジャングルジムに接続された・・・」 「・・・」 「・・・おいっ!無視して逃げ出すなっ!なんとかしてくれよっ!」 「とりあえず・・・お前の家族に連絡するぞ?」 「・・・ああ・・・もう、それしかないものな・・・頼んだ・・・」 この時家には誰もおらず、京介の救出は、かなり時間が経ってからであった事は言うまでも無い。 -------------
https://w.atwiki.jp/kiririn/pages/1694.html
579 :【SS】:2013/05/03(金) 18 57 27.23 ID mzfFRRgK0 ゴールデンウィーク最終日。 俺は駅前で、愛しの……妹と待ち合わせをしていた。 まあ、ようするにデートだ。 なぜこんなことになっちまったかというと――― 昨日の夜、桐乃が風呂上りに飲もうと買ってきたいちごオレを俺が飲んじまったので、その責任を取るはめになって……。 その結果、桐乃をデートで楽しませることになっちまったわけだ。 デートをすることが責任を取ることと、どう繋がるのかは、正直よくわからん……。あいつ何を考えてやがんだ? などと考えているうちに、愛しの妹様が現れた。 「お、おまたせ」 「そんなに待ってねえよ、じゃあ行くか」 「うん」 今日の、桐乃のファッションはいつも以上に気合が入ってる。 春らしいピンクのカーディガンにデニムスカートというのだろうか―――相変わらず何を着ても似合うやつだ。 ……ちなみに、駅前までは普通に一緒に歩いてきた。桐乃の希望で、待ち合わせの小芝居を挟んだというわけだ。 「で、どこ行くよ?」 「はあ?あんたが考えてくれるんでしょ?あたしが楽しめるとこ」 「んなこと言われてもな……」 ぶっちゃけ一晩考えても、植物園くらいしか思い浮かばなかったんですが……正直に言うと怒られそうだしなあ……。 どうしたもんか。アキバ以外で桐乃が喜びそうな場所なんて、俺の頭じゃ思いつかねーんだよな。 「ほら早くっ」 「えっと……こ、この前のデートのやり直し…ってのはどうだ?」 「この前のデートの……?」 「お、おう」 「……ん。それでいい」 「え…?ほんとにそれでいいのか?」 「いいっつってんじゃん。さっさと行くよ!」 「わ、わかったから引っ張るなって」 ……正直、怒られるかと思ってたんだが、桐乃はご機嫌らしい。勢いよく腕を絡めてきた桐乃の横顔は紅潮しているように見えた。 前回と同じく、妹と腕を組みながらやってきたのは映画館である。 もちろん観たのはアニメ映画だ。前回はリトルなんとかってアニメだったが、今回は俺の強い要望でドラゴンボールの新作にしてもらった。 やっぱゴクウはかっけえぜ!……と、俺は非常に楽しめたんだが、桐乃はどうだったんだろう? バトル系のアニメなんてこいつの趣味には合わなかったんじゃ……? 「えっと、おまえいまの映画どうだった?」 「ん?もち、面白かったよ」 「そっか、桐乃の趣味には合わないんじゃなかったかって、ちょっと心配だったんだけど楽しめたんだな」 「うん!あたしもドラゴンボールは全部見たけどさあ、やっぱゴクウはかわいいよね~」 「かわいい…?カッコいいじゃなくて?」 「え?かわいいっしょ?」 ………女の感性ってのはどうなってるんだろうな。俺とこいつが同じ作品を見てたのかあやしくなってくるぜ。 まあ、桐乃も楽しかったみたいでよかったよ。一安心したところで腹が減ってきたことに気付く。 「なあ、そろそろ飯食いに行くか」 「ん~、そだね。あんた、前にあたしが教えてあげたお店ちゃんと覚えてる?」 「スイーツショップだろ?任せとけって」 「ん。じゃあ、エスコートしてよね」 「はいよ」 ………………迷った。 もはや、目的地の方向さえわからん。 「えっと、な……桐乃」 「迷ったんでしょ」 「んなことはねーよ?ただ、ちょろっと方角を見失ったと言いますかね?」 「迷ったんじゃん」 「ぐっ……」 「ていうか、さっき通り過ぎてるかんね」 「お、おまえ!気付いてたんなら教えろよ!」 「だって、京介が任せとけって言ったんじゃん。どうすんの?」 「くっ……桐乃さん、お店に連れて行ってくださいますか」 「しょーがないな~!あんたって、ほんとあたしがいないとダメだよね~!にひひっ」 「へいへい……そうですね」 結局、桐乃にエスコートしてもらい、スイーツショップに到着することができた―――のは、いいのだが……。 当然ながら店内は女の子たちばかりなわけで、俺は以前と同じ気まずさを堪能していた。 「ねぇ、あんたはなに頼むの?」 「んー、そうだな……おまえはどうするんだ」 「あ、あたし…こ、これっ……食べたいかな」 「なっ……!?これって、おまえ」 「えと、ダメ…?」 桐乃が指差したのは―――カップル限定のパフェという恐ろしいシロモノだった。 恥ずかしいなんてもんじゃねえ……。完全にバカップル専用の食いモンだぞコレは! ……だがしかし、俺の今日の目的は桐乃を楽しませること。 こいつがこのバカップルパフェを食いたいってんなら、付き合うしかないだろう。 「……わかった。それにしよう」 「ほんと!?やったあ!このパフェ前から気になってたんだよね~」 「そ、そっか。じゃあ、注文しようぜ」 「うん!すいませーん!」 桐乃が声をかけ、店員が寄ってくる。 「えっと、このカップル専用パフェひとつお願いしますっ!」 「かしこまりました。オーダーお願いしまーす!カップル専用パフェひとつでーす!」 ちょ……っ!はあ!?このクソ店員!なに大声でオーダー言っちゃってんの!? クスクスと周りの女の子たちの笑い声が聞こえる……視線がいてぇよ……。 チラッと桐乃の顔を見る。 「………うぅ」 どうやら、さすがの桐乃もこれは恥ずかしかったらしい。頭から湯気が出るほど真っ赤になっている。 その後、運ばれてきたパフェを桐乃は美味しいと嬉しそうな顔で食べていた。 ぶっちゃけ俺は好奇の視線が気になって、味なんてよく分からなかったが、桐乃の幸せそうな顔を見て大きな満足感を得るのであった。 パフェを食べ終わり、しばし雑談に興じていた俺たちだったが桐乃が化粧室に行ってしまい、手持ち無沙汰になった俺は桐乃の席をなんともなしに見ていた時だった。 雑誌がぽつんと置いてあるのを発見。あいつがカバンから落としたのか?俺はなんとなくそれを手に取り、表紙を確認――― 『プラトニックデート特集・二回目のデートでキスを成功させる秘訣』 …………………。 俺は雑誌をそっと元の位置に戻した。 「おまたせー、ってあんたどうしたの?すごい汗かいてるけど……」 「い、いや!なんでもねえよ?さ、さて、そろそろ行くか?」 「う、うん……あの、ほんとに大丈夫?」 「大丈夫だって!ほら、行こうぜ」 「うん…」 俺は席を立ちながら横目で桐乃を見ると「あっ……」という声とともに、さっきの雑誌を慌ててカバンに入れる桐乃が見えた。 ………やっぱり、あいつの持ち物だったか。とりあえずいまは深く考えないようにしよう……。 俺は混乱した頭をかかえて、桐乃と共にゲーセンへと向かうのだった。 「―――って、着いて早速プリクラコーナーかよ!」 「はあ?あんたがプリクラ撮りたいって言ったんじゃん?」 「いや、俺はプリクラ撮るのか?って、聞いただけだぞ……」 「だっけ?『桐乃ー、頼むから俺とプリクラ撮ってくれぇ』って、こんな感じじゃなかった?」 「言ってねぇよッ!……俺、写真とかあんまり好きじゃねーんだよ」 「こんな可愛い妹とプリクラ撮れるんだから感謝しなさいっての」 「おまえの可愛い写真ならすでにいっぱい持ってるっての」 「~~~ッ!は、はあ!?き、きもっ!きもきもきもーっ!」 「ちょ、騒ぐなって!人が集まるだろ!」 このあと、プリクラを撮った俺たちはいつかのように二人で分け合い、帰路をゆっくりと歩いていた。 …………手を繋いで帰る俺たちは、周りからは恋人同士のように見えたかもしれない。 「なあ」 「ん?」 「今日、どうだった」 「楽しかった…かな。あんたにしてはなかなかやるじゃん」 「へっ、そうかよ。なら、責任は取れたってことか?」 「……うん、そだね」 「………」 「ねぇ、あんたは?」 「なにが?」 「今日のデート…どうだったの」 「楽しかったぞ」 「…ほんとに?」 「おう」 「ふうん、妹とデートするのがそんなに楽しかったんだぁ?」 「お、おまえなっ!」 「ふひひ~っ!シスコーン」 「……ほっとけ」 いい雰囲気だ。さて、どうすっかな。こいつを楽しませることが今日の目的だ。 もし、桐乃が俺と雑誌に書いてあったようなことがしたいと思ってるなら………。 桐乃が本当にそれを望んでるなら………俺はこいつの兄貴として、妹を楽しませる義務があるからな。 仕方なく、その……してやってもいい。 ―――なんて、全部いいわけだ。俺は桐乃を手放したくない。これ以上、自分の気持ちに嘘を吐くことはできなかった。 やれやれ………俺も覚悟決めるしかねえか。兄貴じゃなく、男として。 「なあ、桐乃」 「なに?」 「俺たちさ、今日で二回目のデートってことだよな」 「そうだけど…どうしたのいきなり」 「知ってるか?二回目のデートで、恋人たちはデートの締めにこうするらしいぜ」 「えっ、ちょっ!京介?な、なにっ、顔近ッ!」 「桐乃、目閉じとけよ」 「―――んっ」 真っ赤になった俺と桐乃の顔は夕陽よりも紅くて――――忘れられないゴールデンウィークの想い出になった。 ―おしまい― ----------
https://w.atwiki.jp/kiririn/pages/142.html
384 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2011/01/08(土) 00 34 44 ID 1zl/WmEa0 [1/4] 結婚式はまだですか? 393 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2011/01/08(土) 00 50 06 ID 1MHvTRg90 [1/3] 384 桐乃「ふ・・・ふんっ、結婚は家族同士ではできないものよ!」 黒猫「ふっ、足りない頭ではそこまでしか考えられないのかしら?」 桐乃「ハァ?それちょーウザいんですけどー。何か方法あんの?無いでしょ?」 黒猫「結婚しなきゃいいのよ。私があなたの立場ならそうするわ」 桐乃「ハァ?あんたバカァ?」 沙織「結婚しないかわりに両方がお互いに独占しあうってやはり、黒猫氏は目の付け所が違うでござるなぁ!」 桐乃「それじゃあ根本的な解決にならないじゃない!」 黒猫「やけに興味津々ね。」 桐乃「うっ・・・興味・・・無い・・・絶対無い・・・」 黒猫「昨日、2khのKIPで『友達のお兄さんの家にスネークしたんだけど』ってスレ立てたわ」 桐乃「何やってんのあんた!?」 黒猫「あら?あなたのお兄さんじゃないかもしれないじゃない」 桐乃「あんた、他に友達いないじゃない!自然とわたしになるでしょ!?」 黒猫「で、なんであなたはそこまで必死なのかしら?興味無いんじゃないの?」 桐乃「くっ・・・」 -------------
https://w.atwiki.jp/kiririn/pages/1337.html
565 名前:【SS】寒いから 1/3[sage] 投稿日:2011/12/25(日) 03 15 07.12 ID IHNswnQl0 [2/5] 桐乃「~~♪」ピコピコ 京介「…………」カキカキ 京介「……なあ、おまえクリスマスにはどこも行かないのか? 今年もパーティーに誘われたんだろ?」 桐乃「どこにも行かないよ。 今やってるゲームでさぁ、クリスマスのオンリーイベントがあんの。 だからパーティーに行ってる暇ないんだよね」 京介「そうか」 桐乃「あんたこそ、地味子のとこ行かないの? 今年も誘われてるんでしょ?」 京介「地味子って言うな。 それにな、今年は勉強に忙しいんだよ」 桐乃「ふ~ん。そっか」 京介「そうだ」カキカキ 桐乃「…………」ピコピコ 京介「…………」カキカキ 桐乃「……コタツだけだと寒いんだけど。 ストーブつけてよ」 京介「ストーブは今灯油切れだ。 灯油は親父が買いに行ってる」 桐乃「そうなんだ」 京介「そうだ」カキカキ 桐乃「…………」ピコピコ 京介「…………」カキカキ 桐乃「…………さむい」 京介「寒いならおまえの部屋に行けばいいだろ? あっちならエアコンあるんだしな」 桐乃「寒いからコタツから出たくない」 京介「そうかよ」カキカキ 桐乃「…………」ピコピコ 京介「…………」カキカキ 桐乃「………………さむい。 お父さんまだかな?」 京介「お袋と一緒に年末の色々なものも買ってくるって言ってたな。 まだしばらくかかるんじゃないか」 桐乃「むぅ~……」 京介「……しかたないな」 ムク テクテク モゾモゾ 桐乃「ちょっ! 隣に来られると狭いんだけど!」 京介「でも温かくなっただろ?」 桐乃「むぅ~……そうだけどさ」 京介「狭いくらい我慢しろよ」カキカキ 桐乃「ん。 寒いのイヤだし、我慢してあげる。 …………」ピコピコ 京介「…………」カキカキ 566 名前:【SS】寒いから 2/3[sage] 投稿日:2011/12/25(日) 03 15 33.20 ID IHNswnQl0 [3/5] チャララー 桐乃「メールだ」パカ メルメル 桐乃「…………」メルメルメル 桐乃「……これでよし、と」 京介「誰からだ?」 桐乃「あやせ。 やっぱり今からでも来ないか、だってさ」 京介「行くのか?」 桐乃「寒いから無理」 京介「そうか。 寒いもんな」 桐乃「そういうこと。 ここだと狭いけど温かいからね」 チャララー チャララー 桐乃「またメールだ。しかも二件」パカ メルメル 桐乃「…………」メルメルメル 桐乃「……これでよし、と」 京介「誰からだ?」 桐乃「黒猫と沙織。 黒猫からは妹たちが会いたがってるけど、今から来ないかって。 兄貴が忙しいなら一人ででもって」 京介「やっぱり行かないのか? あいつらのサンタ姿とか見れるかもしれないぞ」 桐乃「ん~~…… 寒いからいいや。 あんた一人で行ってくる?」 京介「寒いからコタツから出たくねぇ」 桐乃「だよねぇ……」 京介「沙織からは?」 桐乃「『クリスマスだからGエグゼスを赤と緑でカラーリングしてみましたわ!』だって。 ほら、写メ」ピピピ 京介「あいつは今年も相変わらずだな……」 チャラララン 京介「今度は俺か」パカ メルメル 京介「…………」メルメルメル 京介「……これでよし、と」 桐乃「誰から?」 京介「麻奈実」 桐乃「『寒いから行かない』?」 京介「…………そんなところだ」 桐乃「温かいもんね、コタツ」 京介「ああ。温かいな」 567 名前:【SS】寒いから 3/3[sage] 投稿日:2011/12/25(日) 03 16 12.41 ID IHNswnQl0 [4/5] チャララー 桐乃「今度は加奈子かな?」パカ メルメル 桐乃「…………」メルメルメル 桐乃「……これでよし、と。 クリスマスにあの格好で野外ライブは辛いってさ」 京介「今日メルルのイベントがあったのか。 行かなくて良かったのか?」 桐乃「……寒いでしょ?」 京介「……寒いよなぁ」 チャラララン 京介「また俺か。今度は誰だ」パカ 京介「お袋? なるほど、な」メルメルメル 京介「……これでよし、と」 桐乃「どうかしたの?」 京介「商店街のクジで本日期限のレストランのチケットが当たったんだとさ。 ペアチケットだから一緒に食べてきてもいいかって」 桐乃「どう答えたの?」 京介「クリスマスなんだからゆっくりして来いって」 桐乃「そうだね。お父さんたちも二人でラブラブかぁ…… ところで、あたしたちの夕飯はどうする?」 京介「…………一緒にどこかに食べに行くか?」 桐乃「でも、寒いよ」 京介「けどよ…… 二人で寄り添い合えば寒くないだろ?」 桐乃「……うん。 温かいね」 京介「そういうことだ。 それじゃあ行く準備をするか」 桐乃「そうだね」 京介「……ああ、そうだった。 メリークリスマス、桐乃 今年もおまえと二人だな」 桐乃「うん! メリークリスマス、京介! 今年も二人で一緒だね!」 -------------
https://w.atwiki.jp/kiririn/pages/1880.html
28 名前:【SS】:2014/06/07(土) 21 36 19.88 ID 2XB0fwUKI SS『後日譚 雷雨の留守番』 大学に入って初めての春も終わりに近づき、着々と夏が近づいてきたある日。 家族全員が揃う夜の食卓にて、お袋がこんなことを言い出した。 「京介、明後日からお父さんと二人で、福島の叔父さんのところへ法事に行ってくるわね。」 「え、何日くらい?」 「お父さんの仕事もあるし、一泊してすぐ戻ってくるつもりだけど。」 「ふーん、その間の飯とかどうすんの?」 「桐乃がいるでしょ?」 「へ?」 桐乃が驚いて顔をあげる。 「あたし?」 「あんたたち、親がいないときくらい協力しなさいよ。」 「、、、いや、それ、答えになってねーし。」 俺たちはさらにごねようとしたのだが、そこで親父が威厳のある声で言った。 「京介、留守を頼むぞ。」 親父にこう言われてしまっては仕方がない。 「、、、ああ、分かったよ。」 俺は素直にそう答えるしかなかった。 「そういうことだから、二日間、お兄ちゃんのことよろしくね、桐乃。なにかお土産買ってくるから。」 いや、お袋よ、そういうのは普通、長男に言うべきことじゃないのか? 「しょうがないなぁ、分かった。任せといて。」 そして妹よ、おまえもあたりまえのように納得するんじゃない。 「行ってらっしゃい。お父さん、お母さん。気をつけてね。」 「ありがと。」「うむ。」 ひとり不満げな長男を他所に、にこやかに微笑む器量よしの娘の言葉に、満足そうに頷く親父とお袋だった。 ------------------------------------- そして日曜日の朝。 俺と桐乃は玄関で、出かけていく両親を見送っている。 「では行ってくる。」 「お土産買ってくるからね!」 バタン。 扉が閉まったあと。 「さてと、おまえはこれから」 「ひゃっほう、今日は一日中、リビングの大画面を使い放題!」 「、、、どうするか、なんて聞くまでも無かったな。」 相変わらずの妹である。 「んじゃ、俺はどうすっかな、、、。」 「は?なに言ってんの?」 「へ?」 「メルルとシスカリ、どっちがいい?」 「俺の選択肢、そんだけ!?しかも、その二択かよ!」 「あったりまえじゃん。」 さも当然のごとく言い切る桐乃。 「、、、じゃあ、シスカリで。」 仕方なくゲームを選ぶ俺。 というのも、こないだ一緒にメルルを見ていたときに、俺は途中で寝てしまって、後で散々文句を言われたのだ。 だいたい何でこいつはわざわざ後で文句を言うんだか。もたれ掛かって寝ちまったんだから、すぐ起こしてくれればいいのによ。 「じゃあ、ちょっと待ってて。」 そう言って桐乃は二階に上がっていき、自分の部屋からノーパソを持って降りてくる。 いつものとおりコントローラを2つ付けた状態だ。 やれやれ、今日は余計な気を使わずに対戦できそうだな。 最近は桐乃の部屋で、このノーパソ1台を使って対戦してたから、いつも狭くて仕方がなかったのである。 早速、リビングのテレビにノーパソを繋ぐと、大画面に「シスカリ猛将伝」のタイトルが表示される。 おお、やっぱ大画面だと迫力が違うな。エロゲーだけど。 ------------------------------------- で、対戦を始めたものの、、、勝てねぇ、、、。 「きゃはは、弱っわ!」 嬉しそうにはしゃぐ桐乃。 だいたい俺、受験勉強でゲームが出来なかったから、前より腕がおちてるんだよな、、、。 まぁ、そういうだけの腕もなかったのだが、やっぱり出せていたワザが出せなくてもどかしい、と感じるのは、腕が落ちたってことなんだろう。 そういうわけで、、、 「てりゃっ」 「くぬっ!」 「ほいっ」 「ぬぐっ!」 「ていやっ」 「くっそ、、、!」 「へっへー、またあたしの勝ちぃー♪」 「ちくしょー!おまえ動きよすぎだろう!」 「あんたがトロすぎるだけだっての♪」 「ぐぬぬ、、、。」 「よーし、これでシスカリ30連勝!」 え、そんなに負けてんの!?俺?てか、わざわざそれを数えてたの?こいつ。 「ふひひー、あんたさー、別の強いキャラを選んでもいいよ?」 「くっそ、、、。」 そう言われても、違うキャラだと操作が分かんねぇんだよ、ちくしょう。 「ひひひ。」 うーむ、、、なんとか、一泡吹かせられないものだろうか、、、。 キャラ選択画面をにらみつけながら考える。 う~ん、、、あ、そうだ! 「、、、別のキャラでもいいんだな?」 「勝てるもんならね~♪」 余裕たっぷりの台詞だな。 「よし、、、じゃあ、絶対勝てるキャラにすっか。」 「ほー、なに?その自信?」 「まぁ見てな、、、。」 俺は自分専用の持ちキャラリストを開き、その中にあるユーザーキャラリストを選択する。 このリストには、プレイヤーが作成したキャラクターデータが入っていて、この中からもキャラを選択できるのだ。 そして、その中から俺が選んだのは--- 「なっ!それって!」 そう、俺が選んだのは、以前沙織が作ってくれた、桐乃そっくりのキャラクター、『きりりん』だ。 「ふっふっふっ、前に沙織が作ったデータをもらってたんだよ。」 「な、なに勝手なコトしてくれちゃってるワケ!?あたしの許可は!?」 「いや、これ、沙織が作ったキャラだし。」 「ぐぅ、、、。」 「へへ、さあ、勝負しようか。」 「ちっ。」 渋々対戦を始める桐乃。だが、案の定、なかなか手を出せずにいる。 まぁ、そりゃそうだろう。なんせ自分そっくりのキャラに攻撃なんてしたくないし、負けてほしくもないだろうしな。 そして遂に相手をK.O.して勝利する『きりりん』。 「勝ちぃー♪」 「ぎにに、、、。」 「ふはは、どーよ?」 「いばんな!えっらそーに!ちょームカつく~っ!」 「ひひひ。」 「う~~~っ。」 してやったりだぜ。まぁ、ちょっとズルいかもしれないが、いちおう、勝ちは勝ちだ。 「!ところであんた!」 悔しがっていた桐乃が、はっと何かに気付いたように、突然、顔を上げる。 「な、なんだ?」 「、、、このあたしそっくりのキャラを、変なことに使ってないでしょうね?」 「な!」 「その反応、、、まさか!?」 「使ってねぇ!そもそも選ぶのも初めてだっての!前にPCをセットアップしたときに、沙織のやつが勝手に入れてったんだよ!」 そのとき沙織に聞いた話だが、クラウドとかいうやつで、一度登録すると、別のPCでもキャラを呼び出せると聞いていたのだ。仕組みはよく分からん。 「そ、そう?だったらいいんだケド。」 それを聞いて納得したのかしてないのか、ホッとしたような、不満なような、複雑そうな表情になる桐乃。 「、、、でも、その発想はなかったな、、、なるほど。」 俺がそうつぶやくと、 「な、なに一人で納得しちゃってんのよ!てか、没収するに決まってんでしょ!さっさとよこせ!」 そう言って、俺からコントローラを奪い取り、俺のユーザーキャラリストからデータを取り出して自分のリストにキャラを移動させる。 「、、、よーし。これでもう変なことはできないっしょ。」 そう言いながら、移動した「きりりん」を早速、自分で選択する。 「って、おまえが使うのかよ!」 「あたし似のキャラなんだから、あたしが使うべきに決まってんじゃん!」 「そういうもんか?」 「あったりまえじゃん!ほら、グチグチ言わずにさっさと選べっての!」 仕方なく俺はいつもの電撃使いの妹を選択した。 そして再び対戦が始まったのだが。 そこで俺はふと思いつく。 「でもさ、、、。」 「なに?」 「これって、おまえを倒したら、それがご褒美になるんだよな、、、。それはそれでアリかもな。」 「な!」 あからさまに動揺する桐乃。 「よっしゃ!気合入った!」 「ちょ!い、妹そっくりのキャラを裸にするために気合入れんな!この変態!」 「ばーか、冗談だよ。」 「とか言ってるわりに、さっきより反応が早いんですケド!?」 「気のせいだ。」 、、、結局その後、一回も勝てなかった。ちくしょう。 、、、、、念のため言っておくが、今の『ちくしょう』は、純粋に勝負に勝てなかったことに対してのものであって、決して、他意はないからな。 ------------------------------------- そして俺たちがゲームを切り上げようとしていたとき、スカイプで瀬菜から着信がかかってきた。 桐乃が通話ボタンをクリックすると、画面上に瀬菜が現れる。 『どーもー、桐乃ちゃん。あれ?高坂せんぱいも。お久しぶりです。』 「ああ、久しぶり。元気そうだな。」 『はい。せんぱいもお元気そうで。今日はどうしたんですか?二人揃って?』 「ちょうど今、二人でゲームしてたんだよ。」 『へー、一緒にゲームですかー。あいかわらず仲が良いですねーw』 「「ほっとけ!」」 桐乃と声がハモる。 『あはっ、やっぱり仲がいいですねーw』 「ご、ごほん。それはそうと、なんの用?せなちー?」 『あ!そうそう、実はー、すぐにお見せしたいものがあって連絡したんですけどー。ティヒヒヒヒ♪』 「い、嫌な予感しかしないんですケド、、、。」 同感だな、俺もだ。 『とりあえずコレを見てください!』 同時にチャットでURLが送られてきた。 「すっごく見たくないんだケド、、、。」 桐乃がマウスから手を離す。 『まぁまぁ、そう言わずにーw』 どうやら、どうしても見せたくて仕方がないらしい。 「まぁ、ちょっと見るくらいならいいんじゃねぇか?」 俺はそう言って、桐乃の代わりにマウスを手にして、瀬菜が送ってきたURLをクリックする。 「あ゛」 桐乃がなにやら抗議の声を上げようとしたが、時すでに遅く、すぐに画像が表示される。 「「げ!」」 『どうです!?遂に念願の同人誌が完成したんですよ!その名もズバリ、『桐乃くんとお兄ちゃん』!』 「「そんなもん、作ってんじゃねぇっ(ないっ)!」」 またも声がハモる。 『いやー、この前、バイクで二人乗りしてる写真を見せてもらったときー、桐乃ちゃん、珍しくボーイッシュなカッコしてたじゃないですかー?』 それってこの前のツーリングの写真のこと?もしかして、また、どっちの兄貴がシスコンかで対決してたのか?飽きねーな、おまえら。 「そ、それが?」 『でゅふふふふ、その桐乃くんコスプレのおかげで、あたし、すっごく創作意欲がわいちゃって!』 「こ、コスプレってゆーな!」 『やっぱ実際に見ると違いますよねー♪で、早速また、凄腕絵師さんに連絡したんですよ!』 「おい!桐乃!『また』ってなんだ!?」 「あ、あたしに聞かないでよ!」 『うへへへへ、、、あたしが一生懸命、懇切丁寧に具体的な説明をした甲斐もあって、凄腕絵師さんによる超濃厚なホ(ぶち)』 、、、。 「と、とりあえず、見なかったことにするか。」 「う、うん、そだね。」 ------------------------------------- それから俺たちは、気を取り直して、一緒に夕食の買い物に出かけた。 二人でスーパーに来るなんて、いったい、いつ以来のことだろう? 「これと、、、これと、、、あと、、、あ、これも。」 買い物かごにどんどん材料を入れていく桐乃。 「なぁ、おまえ、いったい何を作るつもりなんだ?」 「ん?カレーだけど?」 「、、、これ、いつも俺がお袋に買い物を頼まれるときの材料とえらく違う気がするんだが、大丈夫なのか?」 俺が不安げにそう問いかけると、 「ふん、任せとけっての。」 と、自信満々で答えてくる。 こいつが最近、お袋に料理を教えてもらってたのは知ってるんだが、そのお袋が使ったことがないような材料が増えていくのが恐ろしい。 そんなことを考えながらも、二人でスーパーを歩き回っていると、突然、横から声を掛けられた。 『はい、そこの可愛い奥さん!これ、いかがっすか?』 「へっ?」 商品の実演販売をやっていたおっちゃんが、ウインナーを爪楊枝に指して桐乃に渡してくる。 「お、お、お、」 完全に硬直してしまった桐乃にかわって、俺はおっちゃんからウインナーを受け取り、自分の口に放り込む。 「お、美味いっすね。もひとつ、もらえますか?」 『はいよ、だんなさん。』 「ども。ほら、行くぞ。」 そう言っておっちゃんからウインナーをひとつもらったあと、硬直したままになっている桐乃の背中を押して、その場を離れる。 「あ、あ、あ、あんた、、、」 ようやく正気を取り戻して文句を言いかけた桐乃の口に、 「ほれ。」 と、俺はさっきもらったウインナーを放り込む。 「むぐ。」 「、、、どうだ?」 「、、、んぐ。へぇ、美味しい、、、じゃなくて!」 「んじゃ、ちょっと買ってくるわ。」 「ちょ!ま、待てっての!は、話を聞けぇ~っ!」 、、、こんな感じで、つつがなく買い物を済ませた俺たちは、スーパーを後にして、帰宅の徒についたのだった。 ------------------------------------- 「じゃあ、今からご飯作るから。」 「なんか手伝うか?」 「んー、じゃあ、先にお風呂の掃除してきて。終わったら食器出すの手伝ってよ。」 「りょーかい。」 ってなわけで、風呂掃除を始める俺。 、、、そういえば、前にも二人で留守番することになったことがあったな、確か。 最初のころはまだ、すっげー仲が悪くて、ろくに口もきかなかったってのにな。 それが、だんだんと少しずつ変わってきて。 今ではこうやって一緒に協力しながら家のことをしてるんだもんな。 そしてそれが、いつの間にやら、俺にとっての普通の日常になっている。不思議なもんだ。 そんなことを考えながら、洗い終わった浴槽にお湯を溜めつつ、棚の奥に隠してある桐乃お気に入りのメルルの入浴剤を出して入れてやる。 「俺がこれを妹のために入れてやるようになるとはなぁ、、、。」 その空になったメルルの袋を眺めつつ、思わず俺は、ふっと笑みを浮かべるのだった。 「風呂掃除、終わったぞ。」 リビングに戻ると、既にカレーのいい香りがしていた。 「あっそ。じゃ、食器並べてよ。」 「ああ。」 かちゃかちゃ。 食器を並べながら聞いてみる。 「出来はどうだ?」 「あたしを誰だと思ってんの?」 「、、、だよな。」 バレンタインチョコレートの一件以来、ちゃんと味見をするようになって、「メシマズ妹」の汚名を返上したんだもんな、おまえ。 「ひひひ、まー、期待して待っとけってーの。もーちょっとだかんね。」 「おう。楽しみにしてっかんな。」 そして---。 夜の七時。俺は妹と一緒に食卓についた。いつもの習慣ってやつだ。 少しだけいつもと違っているのは、桐乃が正面に座ってるってことくらいか。 それがやけに新鮮な感じで、、、そして、なんていうか、、、 「へへ、、、向かい合わせに座るってのも、なんか変な感じだよね。」 桐乃が照れくさそうに、そんな言葉を口にする。 だよな、やっぱり。 「ねぇ、なんで、こんなふうに並べたワケ?」 え?いや、なんでって聞かれても、、、なんでだろうな? 「ま、まぁ、別にいいじゃねえか。」 「ひひひ。まぁ、別にいいけどぉ。」 「じゃあ、た、食べるか。」 「うん。」 テーブルの上に並ぶのは、桐乃の手作りカレーと、さっきスーパーで買ったウインナーとサラダ、そしてインスタントのみそ汁という献立。 まだまだレパートリーは少ないけれども、こいつのことだ。ひとつひとつ完璧に身につけていくことだろう。 「いただきます。」 「いただきます。」 一緒に手を合わせてから、カレーを一口。 「ど、どう?」 と、恐る恐る俺の顔を覗き込みながら、桐乃がそう聞いてくる。 俺は感じたままの感想を、そのまま素直に口にした。 「うん、美味い!」 「ほ、ほんと?」 「ああ、ホントだ。すっげえ美味い!」 「ん、そっか。よかった、、、じゃなくてっ!」 ちょっとだけホッとした表情を見せたあと、妹は大きく胸を張ってこう答えた。 「妹の手作りカレーなんだから、当然っしょ!」 「、、、だな。」 桐乃が作ったのは、超本格派のシーフードカレーだった。 いつぞやのアキバで食べたレトルトの『妹の手作りカレー(ざらき味)』なんて足元にも及ばない。 これぞ正真正銘、本物の『妹の手作りカレー』というやつだ。 「てか、お袋のより美味いんじゃね?」 「そ、そんなに美味しい?」 「ああ。すごくな。」 「へへ、、、そか。」 そう言って、嬉しそうに、はにかんだ笑顔を見せる桐乃。 へへ、、、幸せそうな顔しやがって。 ま、そう言う俺も、たぶん同じような顔してるんだろうけどな、きっと。 そして、おかわりを食べ終わったあと。 「ごちそうさま。」 俺は心から、そう口にしたのだった。 ------------------------------------- 「後片付けは俺がやっておくからよ、先に風呂に入れば?」 「ん?そう?じゃあ、お願いしよっかな。」 「ああ。ゆっくりしてきな。」 「ん。」 桐乃はそう言って、いったん自分の部屋に戻ったあと、着替えを持って降りてきた。 「んじゃ、先に入るから。のぞかないでよ?」 にひひ、と笑いながらそんな言葉を口にする。 「ばーか。さっさと入ってこい。」 「はーい。」 そしてようやく後片付けも終わったころ。 窓の外がピカッと光ったと思いきや---。 「!」 バリバリバリバリ、と、もの凄い雷鳴が轟いた。 次いで、バチッ!という音とともに、世界が暗闇に包まれる。 「うおッ、、、!近いな!?」 どうやらいまの雷で、ブレーカーが落ちてしまったらしい。 バシーンと、もう一発でかいのが落ちる。 次いで、ザーッという強い風雨が窓を叩き始めた。 「おいおいおい、、、まいったなこりゃあ。」 天気予報で雷雨だなんて言ってたっけ? 「えっと、懐中電灯は、、、っと。」 俺はリビングに備え付けてある非常用の懐中電灯を取り外して、手際よく明かりを確保した。 そしてリビングを出て、玄関脇にあるブレーカーを上げる。 かちん。 「ありゃ。」 しかし、家の電気が点く様子はない。どうやら、さっきの雷で停電になっちまったようだ。 そうしている間も、あいかわらず強いままの風雨が、ががん、ががん、と、窓を叩き続ける。 「やば。」 俺は慌てて、雨戸を閉めていく。おかげで服はびしょびしょだ。 しかたない、風呂にタオルを取りに行くか、、、。 そこで俺は思い出す。 「そういや、桐乃、大丈夫かな、、、。」 俺は脱衣所の扉を叩く、、、が、返事がない。 「は、入るぞ、、、?」 そう言って、ゆっくりと、扉を開く。 「桐乃、、、?」 懐中電灯の明かりで脱衣所の中を照らすと。 「お、おっそい!さっさと来いってーの!」 風呂の中から扉越しに怒鳴り声が響く。 「すまん、でも仕方ないだろ?急いで雨戸閉めたりしてたんだからよ。」 桐乃が風呂の中にいることを確認し、脱衣所に入った俺は、棚から新しいタオルを出して、頭を拭きながら、そう答える。 「、、、ったくもう。外、風すごいけど、、、大丈夫だったの?」 「まぁ、雨戸も閉めたし、もう大丈夫だろ?」 「じゃなくて。」 窓のことじゃないのか?とすると、、、ああ、そういうことか。 「ああ、俺は大丈夫だ。ありがとよ、桐乃。」 「ふん。あっそ。」 こいつらしい、そんなやり取りに、思わず頬が緩んじまう。 「それで?電気は?点かないの?」 「ああ。停電になっちまったみたいだ。」 「またぁ?」 「、、、また。」 まぁ、その気持ちはよく分かる。なんたって、まんま、昔あったシチュエーションとほとんど同じ状況だからな。 「、、、あんた、ワザと電気消したりしてんじゃないでしょーね?」 「?なんでそんなことする必要があるんだ?」 「入浴中の妹に近づくための計画的な犯行とか?」 「どんな変態だよ!俺は!」 「ひひひ。」 「ったく、、、。」 ま、この調子なら大丈夫だろう。 「じゃあ、懐中電灯つけっぱで、ここ置いとくからな。」 「え?あんたは?」 「部屋に自分の懐中電灯があるからな。それを取りに行くよ。」 「、、、。」 「ん?どした?」 「、、、、てよ。」 「え?なんだって?」 「、、、そ、そばにいてよ、っつったの!」 「おまえの?」 「そ、そう!」 、、、そっか。 もしかして前のときも、そう言おうとしてたのかもな、こいつ。 俺は昔の出来事を思い出す。 なんだかんだ言っても、やっぱり怖かったんだろうな、きっと。 その辺は、昔とちっとも変わってないのな、おまえ。 「やれやれ、しょーがねーなー。」 俺は頭をかきながら、こう伝える。 「分かったよ、桐乃。ちゃんとここで、おまえのそばにいるから。心配すんな。」 「、、、うん。」 前は、震えていて、かき消されちまうような小さな声だったけれど。 前は、気付いてやれなかった、分かってやれなかった、そんな気持ちだけど。 今ではもう、こうしてお互いに、ちゃんと伝えることができる。分かり合うことができる。 そんなあたりまえのことが、なんだかとても嬉しくて。 俺は気付かれないように、そっと小さく呟くのだった。 「、、、これからも、ずっと、な。」 ---そして。 しばらくして、ぱちぱちと蛍光灯が瞬き、室内が明るさを取り戻した。 「お、やっと点いたな。」 「てことは、ホントに停電だったんだ。」 「あたりまえだ!」 「ひひひ。」 ったくこいつは。 「んじゃ、リビングに戻っとくからな。」 「ん。」 そしてドアノブを回そうとして、俺は手を止める。 「あ、そうだ、桐乃。」 「なに?」 「へへ、背中、流してやろうか?」 俺は、ちょっとだけからかうつもりで、そう言ってやった。 「、、、いいの?」 「ぶっ!!!」 予期せぬ返事に、盛大に噴き出す。 「は!?え???はぁっ!?」 ど、ど、ど、どういうことだ!? 「きゃはは、ばーか、冗談に決まってんじゃん!」 ぐっ、、、!ち、ちくしょー!からかうつもりが、逆にからかわれちまってんじゃねーか! 「あ、あのなぁ、、、。」 「ひひひ。んじゃー、そろそろお風呂あがるから。さっさと出てってくんない?」 「、、、ったく。はいはい。」 「出てったフリってのはナシだかんね?」 「おまえはいったい俺をなんだと思ってんの?」 「んー?どスケベの変態シスコンバカ兄貴?」 「断じて違う!」 しかも、『バカ』を付けたな! 「えー?だって前にあたしの着替え中に部屋に入ってきたときも、なかなか出て行かなかったよねー?あんた?」 、、、いかん、否定できない前科がありやがった。 「あ、あんときはあせって気が動転してたんだっつったろ!」 必死になって弁明する俺。 「はいはいw」 そんな俺とは対照的に、軽口で答えてくる桐乃。 「、、、ほ、ホントに分かってくれたんだろうな?」 「だから、分かったってば。そーやって、お風呂に入ってる妹のそばに居続けたい気持ちは分かるんだけどさー、いーかげん、ホントに上がりたいんだけど?」 「ぜんぜん分かってねぇぇぇぇーーーっ!」 そうやって、二年ぶりの嵐の夜は、文字どおり、嵐のように過ぎていったのだった。 ------------------------------------- ちなみに、余談ではあるのだが。 そのひと月後、いつものメンバーでのアキバ散策中に。 とあるショップの店頭で販売されている『桐乃くんとお兄ちゃん』を発見して。 『いやぁ、ある意味、もはや有名人ですなぁ、お二人とも。』 沙織のこんな台詞を聞きながら、二人で愕然とする俺たちなのだった。 Fin ----------
https://w.atwiki.jp/kiririn/pages/1113.html
545 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2011/09/18(日) 18 06 09.48 ID qCTBxFnT0 [7/21] 503 乙! 兄妹喫茶というナゾの単語が頭に浮かんだ。 桐乃「なにこの兄妹喫茶って! ねえあやせ、行ってみよ!」 あやせ「う、うん」 あやせ(なんだろう、この桐乃のはしゃぎ具合?) 桐乃「この教室だって!」 桐乃(うひょぉぉ! 一体どんな喫茶店なんだろ!?) ガラ 京介「だから俺の妹のほうが可愛いって言ってるだろうが!」 赤城「はっ!この資料見て見やがれ!」バシ 観客「うぉぉぉぉ!」 そこには、壁一面にあたしやせなちーの写真と 『愛妹の炭チョコ』 『ぐちゃぐちゃ腐海カレー』 などの謎メニューが貼りだされ、教壇では二人が言い争いをし、 客たちが点数を付けると言う、カオスな世界が広がっていた。 ガラ 桐乃「あやせ、帰ろっか。 あれ、あやせ?」 あやせ「桐乃のほうが可愛いに決まってます! ほら、これを見てください!」バシ 観客「うぉぉぉぉぉぉぉぉ!」 桐乃「・・・・・・終わった」orz -------------
https://w.atwiki.jp/kiririn/pages/1137.html
733 名前:【SS】[sage] 投稿日:2011/09/21(水) 19 15 09.63 ID gkFmHBvw0 [5/24] タイトル:台風 「・・・ん、こっちは大丈夫。あっ、そうなんだ」 リビングで電話に応対する桐乃。相手はお袋のようだ。 「わかってる。ちゃんと戸締りするから、それじゃ」 そういうと桐乃は受話器をおいた。 「今日、お父さんとお母さん、帰れないって・・・」 「台風でか」 「そうみたい」 親父の久しぶりの休暇もあり、親父とお袋は日帰りの旅行に出かけている。台風も来てる んだからまたにすればと俺は言ったが、「次いつ休みとれるかわからないし、まぁ帰れな くなればそのとき考えればいいわよ」といかにもお袋らしいことを言って旅行に出かけた。 ほんとうなら、夕方戻るはずであったが台風のせいで1泊するらしい。 「まったく、だから言ったのに・・・」 「久しぶりだしいいじゃない、・・・別に1日くらい・・・」 「まぁな、それじゃこっちも晩飯を調達してくるか」 「・・・あたし、作るけど?」 「俺はまだ死にたくない。もう少し上達してからにしろ」 「むかつく!今に見てろ、うまいって言わせてやる」 「はいはい、がんばれがんばれ。」 「うっさい」 俺は立ち上がり、ズボンのポケットの財布を確認する。 「コンビニ行って弁当買ってくるけど、おまえは何にする?」 「あっ、行くならあたしも行く」 「ん、そうか・・・」 そう返事をすると、俺たちは玄関に向かった。俺だけ行けば十分だったが、素直にそう答 えることができなかった。なぜか近所のコンビニとはいえ、桐乃と一緒に出かけられるこ とに嬉しさを覚えた。 ・・・・・・・・・・ 「だいぶ風が強くなってきたな。急いで帰るか」 「・・・んー、そうしたいけど風が強くて・・・まっすぐ歩けない」 桐乃は向かい風に傘を取られないようにしながら歩いている。そのせいでほとんど前が見 えていないようだ。 危ないな、こいつ車来たら轢かれるぞ。そう思った俺は桐乃の肩を抱き寄せた。 「きゃ!?何すんの、あんた」 桐乃は悲鳴のような声をあげながらそう言った。 「ん、いやおまえ前見えてなさそうで危なかったから・・・」 「だからって・・・いきなり抱き寄せること・・・ないでしょ」 「いやだったか」 「うっさい、シスコン」 桐乃はそう言うと、俯いてしまった。 家に着くには、傘を差していたにもかかわらず、ずぶ濡れだった。 「桐乃、風邪ひくと大変だから、先に風呂はいっちゃえよ」 「わかった、ねぇ・・・・・一緒に入る?」 「ん、な、おまえ・・・・・」 俺は一瞬何を言われたのかわからなかった。 「なーんてね、何あわててるの?このシスコン」 間をあけた桐乃の言葉を聞いて、俺ははっとなった。 「からかうな!」 「あはははは」 桐乃は笑いながら、二階の自分の部屋に向かった。その後ろ姿はとても上機嫌だった。 「あいつ、俺のことからかってそんなに嬉しいのか」 と独り言を言ったが、内心もし桐乃が続きの言葉を言わなかったら、俺はどう答えていた んだろう考えてしまう。 俺は桐乃が風呂から上がる前に風邪を引かないように、先に着替えるために自分の部屋に 行った。 夜、コンビニで買った弁当を食べ適当にリビングでくつろぐと、俺は自分の部屋に戻った。 時間も早いし、少し勉強するかと自分に言い聞かせて適当な時間まで受験勉強をした。 「もう、こんな時間か。そろそろ寝るか」 そうつぶやくと、俺は立ち上がって部屋の明かりを消した。外は台風が来ているのか唸り をあげるような風の音と激しく叩きつける雨音がしていた。 ベッドに横になろうとしたとき、ドアをノックする音がした。 「ねっ、起きてる?」 「ああ」 俺が何とも間抜けな返事をすると、ドアを開けて桐乃が入ってきた。その胸には枕が抱き かかえられている。 「ねぇ、今日一緒に寝てもいい?」 俺はコンビニから帰ってきたときのことを思い出して 「またからかってるのか、今度は引っかからないぞ」 と呆れたように言った。 「違うの、雨と風の・・その・・音が怖くて独りでいると寂しくて、それで・・・・・」 そうつぶやく、桐乃の体はわずかに震えていた。それを見た俺は追い返すこともできず 「わかった、こっちに来い」 そういうと、桐乃は「ありがとう」とつぶやき布団に入ってきた。 「京介の体、暖かいね」 「ほんとうにブラコンだな、おまえは」 「あたしは妹だからいいの」 桐乃が俺の胸に顔を擦り付けながら呟いた。俺は優しく肩を抱き寄せてやった。 「こうしてやるのも、おまえが彼氏を作るまでだからな」 「それじゃ、あんたが彼女作るまでこうしてもらう」 「作る気あるのかよ」 「・・・ないかも」 「それじゃずっとこのままだな」 「それでもいいかも・・・・・」 そう桐乃が呟くと、俺たちは深い眠りに落ちていった。 完 -------------
https://w.atwiki.jp/kiririn/pages/1635.html
688 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2013/01/17(木) 14 40 55.58 ID HvhdOSAz0 京介「あー、なんかチョコ食いたいな」 チラチラ… 桐乃「な、なによ」 京介「いや、なんか一ヵ月後くらいにチョコ食いたくなる気がするんだよな」 桐乃「ふ、ふうん……ちょっと買い物行ってくんね…!」 京介「おう、楽しみにしてんぞ!」 690 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2013/01/17(木) 16 06 07.44 ID Ohqr+hsL0 桐乃「せなちーはお兄さんにバレンタインチョコ渡すの?」 瀬菜「はい。バカ兄に『愛情込めてね』って言われましたし、愛情込めて作ってあげますよ」 瀬菜「桐乃ちゃんは作ってあげないんですか?」 桐乃「あたしも作ってあげるケド?……愛情と○○を込めて」 瀬菜「へ、変態すぎますよ!?桐乃ちゃん!!」 ----------